出世するのは仕事の方だけど

今日、たまたま2人の昔のお客様から電話がかかってきた。お一人は前職の印刷会社時代に担当していた出版社の編集者。もう一人は今年の3月まで担当していた日立製作所系の大きなクライアントさんで、引き継いだ今でもプライベートな連絡を取っている方である。たまたま2人とも私にとって、「出世する仕事」を一緒にした当事者だった。
出世する、と言ってもそれは人ではなく、お仕事が、である。
前職での仕事は「家庭菜園大百科」という図鑑だった。その出版社では初版発行部数が2万部の図鑑を出したことがなかったので、紙の厚さから試算、輪転機との相性など、全てが未知だった。厚い紙を輪転機で通すことは印刷会社もリスキーでやりたくないから、誰も工場で責任を持ってくれる人がいなかったので、入社3年目だった私はあくせくと社内の技術部や製紙メーカー、インキメーカー、製本機の製造メーカーの技術者と打ち合わせをしてどうにかこうにか発刊にこぎつけた。そして、この図鑑が合計7刷、10万部以上のヒットになり、その出版社では大百科図鑑がシリーズ化され、当然その製造ノウハウがたまっている前職の印刷会社に発注は今でも一本化されている、といううれしい成長を遂げた本の編集者が彼だった。
もう一件は「カルタ」の仕事。これも最初「面白そう、やってみたら」と社内で賛同してくれたのは、企画の責任者とコマースサイトの責任者のおじさま2人だけだった。後は興味なしか反対なので、とりあえず本業を外れた制作関連も担当したのだが、実は最大の難関は「市販したい」という先方の要求だった。これも社内では当然賛同してくれたコマースサイト以外は流通してくれないので、お義父さんの高校の後輩(笑)のツテを頼って伊東屋に置いてもらったり、大学のサークルの先輩のツテを頼って浅草のお土産屋さんに置いてもらったりした。今ではその市販の実績を見た社内の取次関連の営業さんが動いてくれて書店に置いてもらえるようになり、なんと今年の第2弾は社内のプロの編集者が企画から提案して制作してくれることが決まっている、大出世の商品である。
2人とはたまたま「最初は自転車操業でも、育つ仕事って嬉しいね」と似たような昔話をしてしまった。復帰したらまたこういう「出世する仕事」、ばんばんやりたいなあ。