『天使たちの探偵』

北村薫さんの円紫さんと私シリーズ以来久々の短編を読み終えた。原リョウ(寮からうかんむりを取った字)という作家さんなのだがこの人も先日の藤原伊織さんばりの遅筆。なかなか次が出ない。ただ彼の作品は沢崎という探偵が常に主役なんだが、彼自身が非常に惹かれる人物に描かれているのだ。
やる気がないようであったり、世をひねているようで不思議と真面目だったり、人に冷たいようで弱者に優しかったりする。だったらいつもお節介かというとそうではなくて、なかなか垣根となる一線を越えることはない、そんな煮え切らないおじさんキャラが、ほんとにいたら私が許せるかどうかはともかく、非常に魅力的なのだ。
沢崎シリーズの3つの長編を読んでいなくてもきちんと筋も分かるし、短編の読みやすさも各編そろっている。
ただ、短編で探偵小説をやると、どうしても「こんなに都合よく偶然がおきまくるかしらん」と思ってしまう泣き所はあるので、それを気にしない人にはお勧めの1作。

天使たちの探偵 (ハヤカワ文庫JA)

天使たちの探偵 (ハヤカワ文庫JA)