尾頭姐さん

今日げんじょを迎えに行って帰宅する前にスーパーに寄った。夕飯、何にしようかなあ、と考えながらふらふらとスーパーの中を歩いていると、「ちょっと、ちょっと、」と私に声を掛けるおじさんがいる。振り返るとどうもスーパーの魚コーナーのおじさんが私を呼んでいるらしい。
「はいはい」と寄っていくと、おじさんは一言。
「料理好きの尾頭付き姐さんだよねえ?」
・・・確かに5月にげんじょの初節句、誕生日と2週間毎に尾頭付きの鯛を用意してもらって買っていき、オーブンで焼いていた私。それを覚えていたらしいのだ。そうです、と答えるとおじさんは右手に持っていた巨大な鯛のアラが一通り入ったビニール袋を掲げながら言った。
「今日祝い事で鯛のお造りを1匹分作ってくれって言うから、姿造りにしますか?って聞いてやったら、捨てると生臭いからいらねえって言われてさあ、食えばおいしいのになあ。」
そうだよねえ、アラ煮だって鯛めしだっていいのにねえ、と合いの手を入れるとどうも買ってほしいらしい。実は今週水曜日に鯛のアラが1匹分売っていたので買ってきて塩焼き用の冷凍にして残りをアラ汁にしたばかりだった私。今日はいいや、夕飯は決めてるから、と言って前を去ろうとした時、おじさんが言った。
「200円でいいよ、200円で」
キラーン。それは買いでしょう。
・・・というわけで今日の夕飯は土鍋で炊いた鯛めしとごぼうと一緒に甘めに煮たアラ煮、それにアラ汁。だんなさんは「鯛尽くしだ、豪勢だなあ」と大喜びである。うふふ。安かったんだ〜とほくそ笑みながら経緯を話すとだんなさんは感心しながら言った。
「もらうの、得意だなあ」
全然人の話を聞いてない。もらったんじゃなーい!