「流星たちの宴」

『流星たちの宴』という文庫本を読み終えた。これは入院した時に「さぞ暇だろう」とごっちが貸してくれたもの。入院当時は点滴の副作用で眠くて読書どころじゃなかったので、ようやく今日になって読み終えた。
株の仕手の世界に身を置いた男の10年間の物語。失意の内に上京した自分を見出し、育ててくれた恩人が一生を賭けた復讐のために仕掛けた仕手戦で、主人公は恩人を裏切る。恩人は自殺し、主人公は生きる意味、金の価値、友情や愛情など、思い乱れながらいつしか恩人の復讐を代行するように仕手の世界に戻っていくが・・・ってな話。
ハードボイルドなの?と言われるとちと違う。それほど主人公は強くもないし、信念もあるようで、ない。でも彼の心の揺れ方が非常に人間的で、リアルで、ぐいぐい読ませる。地味だけど秀作だと思う。
しかし、これを読んで、昔、株を商売にしていた母方の祖父を思い出した。傘寿も超えた頃、よく祖父は巨人戦を見ながら孫の私に、
「100万円よこしてくれたらおじいちゃんがすぐ倍にしてやるぜ。」
と言っていた。お金にさほど困らなくなった今となっては、ダメ元で託してやればよかったかな、と思うがそれは今の気持ち。当時はとてもそんな気にはなれなかった。
とても、懐かしく、微笑ましい。

流星たちの宴 (新潮文庫)

流星たちの宴 (新潮文庫)